治療方法
当院が採用するスタンダードエッジワイズ法
当院の矯正治療で主役なのは、マルチブラケット装置を用いたエッジワイズ法です。この方法は、大人の矯正だけでなく、子どもの矯正でも前歯を揃えるなど、随所で重要な役割を果たします。
マルチブラケット装置とは、歯の本数分の多数のブラケットを使うことから「マルチ」と名付けられていますが、多くの方が「ワイヤー矯正」としてご存知の方法です。すべての歯に固定したブラケットにワイヤーを通して、歯を三次元的に動かすことが可能です。また、全部の歯の位置と傾きを同時に動かすため、治療能率が良く、治療結果は極めて優れています。
マルチブラケット装置を使用する方法は、断面が四角いワイヤーを使うエッジワイズ法が殆どですが、当院ではスタンダードエッジワイズ法を採用しています。
スタンダードエッジワイズ法とストレートエッジワイズ法
現在のエッジワイズ法はスタンダードエッジワイズ法とストレートエッジワイズ法に分けられます。ストレートエッジワイズ法は、歯の形や大きさの違い、歯面の傾きといった三次元的な情報を平均値としてあらかじめブラケットに組み込み、U字型のワイヤー(調節のないワイヤー)を入れると、平均値の位置関係に自然と歯が並ぶシステムです。
例えるなら、平均的な体型の人を想定して作成・販売されている既製服のようなイメージです。しかし、歯の形や大きさ、歯の位置関係は人それぞれですから、平均値が必ずしも個々の口腔内の状況に適しているとはいえません。
一方、スタンダードエッジワイズ法は、ワイヤーを通すブラケットの溝が歯と平行で、歯面との距離も一定です。そのブラケットにワイヤーを通しながら、各歯が自然な位置関係で並ぶように、実際の状況に合わせてワイヤーを曲げ、細かく調節します。
つまり、ストレートエッジワイズ法が既製服なら、スタンダードエッジワイズ法は、個々の体の寸法を測ってていねいに仕立てるオーダーメイドといえるのです。
当院では、主にスタンダードエッジワイズ法を用いて、一人ひとりの患者さんに合わせた矯正装置を手作りしています。歯1本1本の形、傾きに合わせてワイヤーの角度を微妙に調整して、より効率的で効果的な治療を行います。
また、初めて装置を装着するときは、極めて柔らかいワイヤーを使用し、その後、歯の動き具合に合わせて徐々にワイヤーの力を強くするなど、緻密なコントロールを行います。そして、最後も少し細めのワイヤーで仕上げます。こういった細やかな調整や配慮により、治療時の痛みはほとんどありません。
さまざまな治療法
当院では、個々の状態によって必要な、奥歯の位置の調整などの準備を先に行ってから、スタンダードエッジワイズ法を採用します。これは、子どもや大人の治療の場合も同様です。常に、一人ひとりに合わせたていねいできめ細かい治療を心がけています。
上顎前突の場合
上顎小臼歯あるいは上下の小臼歯を抜歯して矯正するのが標準的な方法ですが、奥歯から前歯まで、全体を後方に下げる事が可能なケースであれば、抜歯を避けられます。その見極めを行います。また、下顎を前方に出す方法が適しているケースでは、個々の状態に最も効果的な装置を選択して使用します。これらも小学生から中学生、場合によっては高校生でも治療しています。さらには大人の治療でも可能と思われるケースで試みます。
叢生の場合
顎を拡げる方法、大臼歯を後ろに下げる方法などを検討し、可能であれば抜かずに治療しています。ただし、歯の幅を削る方法は極力避けています。
反対咬合の場合
上顎前方牽引法が治療の標準です。奥歯から牽引するのが一般的ですが、当院では、前歯から牽引して上顎の成長を促すようにしています。この方法で多くの症例で永久歯の抜歯に至らず、かつほとんど後戻りがない結果を得ています。この方法での治療は、小学生から中学生ぐらいまでが適していますが、個人の条件次第で高校生でも可能なケースがあります。
歯科矯正用アンカースクリューなどを用いた矯正治療
アンカースクリューと呼ばれる小さな医療用のネジを使用して歯を引っ張り、効率的に歯を移動させていく治療法です。アンカースクリューを支点に引っ張ることで、安定してスムーズに歯が動きます。また、抜歯をせずに治療できる可能性が高まります。複雑な手技や装置を簡略化することで、ワイヤーなど従来の装置のみでは達成が難しい歯の動きや、より確実な歯の移動が可能となります。植立に際しては麻酔を少量用います。適切な使用であれば、痛みや腫れたりといったリスクはほとんど生じることはありません。
治療法の工夫によって後戻りしにくい結果を実現
治療前の分析と診断矯正治療をしたのに、時間が経ったら歯が動いてしまい、再び歯並びが悪くなってしまう状況を後戻りといいます。後戻りを防ぐために、治療後しばらくの間はリテーナーという装置を使って矯正後の状況を保って安定させるのですが、不正咬合によってはそれでも不十分なケースがあります。
当院では、早い時期に来院いただき成長期を利用した矯正治療において、後戻りは極めて少ない結果を得ています。
例えば反対咬合では、上顎前方牽引法というのが標準的な治療法です。通常は、上の奥歯から全体的に前方向に引っ張ります。しかし当院では、使用する治療方法は同じく上顎前方牽引法であっても、奥歯からではなく前歯から牽引することで、上顎の成長を促しながら矯正しています。
こういった治療法の工夫によって、永久歯の生え方に悪影響を与えず、かつ後戻りしにくい結果を得ています。